塾長のコラム

第1回 課題図書

 第1回 課題図書

 ホームページになんでもイイから書けと、若手にそそのかされて書くことになった黒川です。塾長(生徒には威厳がないと言われていますが……)がこんなモノを書くって、どんなもんだろう。
 といっても、仕事のことしか思いつかないので、今日は、白鴎中で実施されている課題図書について一言。
 それは中間期末の出題形式としてはおもしろい問題。中間期末のテストごとに、文庫本で一冊分ほどに当たる小説を読ませ、10~20点分の配点で出題するのです。もちろん本の持ち込みはできない。あらすじを覚えてテストを受けるのですが、やはり当人の読解力によって記憶に残る量はかなり開きができます。自然な読書でどれほど記憶に残せるか、そこがポイント。
 1学期の中間テストでは、中3生は三島由紀夫「潮騒」、中2生は宮沢賢治「注文の多い料理店」、中1は重松清「きよしこ」だった。
 最も課題に面白みがあったのは、中1の「きよしこ」だろう。正直言って中1の課題としては、分量的に厳しかったが、好評をもって生徒に迎えられた。
 わたしも始めて読んだが、非常におもしろかった。重松清という作家自体が感情移入しやすい主人公を生み出す名人なのだろう。心に思うことを親にも十分に伝えられない主人公、その苦しみ、歯がゆさが実感できるのだ。
 今回の期末では何といってもダリエル・キイスの短編集「心の鏡」。中1の課題図書だが、これだけ難解な作品群をどれだけ読みこなせるか見物だ。知恵遅れの青年が手術によって超知能を手に入れてしまうという「アルジャーノンに花束を」(長編小説の原作になる)。果たして中1生たちは、一度超知能を手に入れながらまた失っていく恐怖を理解できるだろうか。その変貌ぶりは中島敦「山月記」の虎を思わせるところがある。「心の鏡」や「限りなき慈悲」も難しいがおもしろい。試験結果を見るのが楽しみ。
 その他、中3生の「月光の夏」も二度目の出題になるが、悪くない選択だ。単に芸術を愛する特攻隊員の悲劇に終わることなく、「振武寮」という歴史の闇に消えていた事実を掘り起こし、生き残った特攻隊員の生き地獄を扱った作品になっているところが、読書の醍醐味を感じさせる。
 中2の「たけしくん、ハイ!」はそのまま彼の漫談を聞くような作品。ビートたけしが映画「あの夏、いちばん静かな海」の監督でもあることを偲ばせるようなものはない。この静謐な映画を見せるきっかけにでもしたら意義があったかも知れない。